未来観測

痛み

まだまだ暑さが消えない秋晴れの日。
あたしはいつも通り学校に向かって、のろのろと足を進めていた



「えりちゃん、おはよ〜」

一年生の女の子の集団があたしを取り囲む


「おはよ〜。」


そう笑顔で返すと
集団の中の一人の女の子があたしをじっと見つめてこう言った


「えりちゃん、何か今日いつもより化粧濃くない?」


「…え?うそ?」


そういうことに敏感なお年頃の生徒たち。

その子の言葉をきっかけに
周りの子たちまできゃーきゃーと騒ぎ立てる始末。



「えりちゃん何か良いことでもあったのー?」


「い…いいこと?
ないない!」


「何その空白ー!?
あやしー!」




生徒たちの話しが盛り上がる中、あたしは曖昧にその言葉を濁し
職員室へと急いだ




良いこと?



あれは良いことと言えることなのだろうか。

思い出すだけで
心臓がバクバクと大きな音を立てるあの日のことを

あたしは必死に頭から取り除こうとした



< 104 / 231 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop