未来観測
「変なこと?」


「あたしのせいだーとか。そういうこと全部」


「…そんなこと」


図星だった
そんなことをこの一週間、ぐるぐるぐるぐると考えていたから。


「俺が勝手に先生を好きになったんだから。
先生が気にすることじゃないし、これは俺の問題でしょ?」


分かってる。
分かってるけど、人の気持ちはそう簡単には変わらない。

だけどこれ以上彼の機嫌を損ねるのは嫌だったから
あたしは渋々“うん”とうなづき
また明日、と言って電話を切った




幸せだなぁ。とか
好きだなぁ。とか

そんな感情を与えてくれたこの恋は

同時に大きな罪悪感もくっついてきて

だけどこの時のあたしはまだまだ考えが甘かった



その現実を突きつけられたのは次の日。

いつものようにあの教室へ足を進めていると
一人の生徒が扉の前でうずくまっていた


真黒なストレートの髪に
濡れた瞳。
その姿に胸がドクッと嫌な音を立てる





「…浅岡さん?」





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