未来観測
「…えりちゃん。
えりちゃんはどうやって前の彼氏のこと忘れたの?
あたしこのままじゃ…
どんなに頑張っても寛人のこと忘れられないよ」



“寛人”
彼女の口から出た彼の名前を、ぼんやりと頭の中で反芻した

そうか。
彼はたった一カ月の過ちによって
こんなに可愛い彼女を捨てたんだ

一年間という膨大な思い出を
こんなにちっぽけなあたしのために。



「きっと…時間が解決してくれるよ。
今は辛くても…
時間は過ぎていくんだから」



あたしは最低だ。
目の前の彼女に申し訳ない気持ちでいっぱいなのに

もうそれ以上の感情が生まれてこない。


そんな思い出を忘れてしまうくらいに


彼があたしでいっぱいになってほしいと願ってしまう自分がいることに
嫌悪感すら抱いたほどだ


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