未来観測
「良かった。」


「…ん?何が?」


「だってさ、今日朝から先生ずっと元気なさそうだったし。
俺がここに来た時も何かいつもと違ったからさ。
だからそんな風に笑ってくれてちょっと安心した」


彼の思いがけない言葉に
一瞬返事に詰まった自分がいたけれど
すぐに気を取り直して
彼にいつも通りの笑顔を見せる


「うそ?
いつも通り全然元気だけど?」


「…そっか。
俺の勘違いなら、それはそれでよかったんだけどね。」


そう言うと
彼は再び教科書に目を落とし
問題を解き始めた

あたしは何だか彼に全てを見透かされている気がして
すごく居心地が悪い気分になる

気付かなければ忘れられるはず。
そんな想いを止めている防波堤が壊れてしまうのが
その時の自分にとっては
何よりも恐ろしかった




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