未来観測
「俺ね、今日日直だったから朝職員室寄ったんだよ。
もしかしたら先生に会えるかなーってちょっと期待してさ。

で。入ったら先生がすぐ見えて…
お!奇跡じゃん!なんて一人で浮かれてたんだけど。

先生さ、俺が横にいたのに
俺のことなんか目に入んない感じで。

いつもなら笑顔でおはようって言ってくれるのに
今日は何か泣きそうな顔してた。」


一瞬頭の中が朝の職員室の光景でいっぱいになる
あたしはそんなにひどい顔をしていたのだろうか


「教室に戻った後も、どうしたんだろうってすっごい気になって

もしかたら俺なんかしたかな?とか
あり得ないことばっか考えちゃってさ。

気付いたら、いつもより早くここに来てた。

こんな放課後の補習なんて、先生にとっては迷惑極まりないっしょ?
だからいつも時間ぴったしに来て、早く帰んなきゃって思うんだけど。

今日は我慢できなかった」



ゆっくりと
だけどしっかりとあたしを捕らえた彼の瞳。

心をぐっと鷲掴みにされた気がした


何か言わなくちゃ。
そう焦れば焦るほど言葉が空振りする




けれど。
それでもその時のあたしは
泣かないことに精一杯だった
誰かがあたしのことを見ていてくれた
気付いてくれた

それだけで心がいっぱいになって


あたしは教師と

一人の女としての境目で

必死に戦っていたんだ




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