未来観測
「泣きたいなら泣けばいいのに」


今にも涙腺が崩壊しそうなあたしに
投げかけられた声

それでも。
やっぱりあたしは教師としての自分を選んでしまった

生徒の前で泣くなんて、そんな自分は許せなかったから。


「…大丈夫。

ごめんね、ちょっと昨日色々あって…。
だけどもう大丈夫だから」


必死の強がり。
彼にはそんなの通用しないなんて、百も承知だったけれど
それでもまだあたしには教師としてのプライドが
ほんの少しだけ残っていた


すると彼はあたしの方をじっと見て
何か言いたげな顔を向ける


「何?
何か顔についてる?」


「…ううん。
結局泣かないんだなーって思って」


「…は?」


「だってさ。
せんせーの泣き顔ちょっと見たかったなー、なんてね。」


そう言って
いつものように茶目っ気たっぷりな顔を見せた彼は

もちろん真っ赤になったあたしを
ゆっくりと下から覗き込んだ



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