未来観測
「…ですよねー。
やっぱ寂しいのは俺だけか。」


何かを言い聞かせようとしている彼の姿に
何だか今までとは違う意味で、大きく自分の胸が鈍い音を立てた



ふと思い出す。

彼はこの一ヶ月間。
たくさんの言葉をあたしにくれた

昔。
あたしが高校生の頃に感じていたであろう、懐かしい言葉たちを。


でも今となっては、それらがどんな意味を持つのか
今のあたしには理解することができない



「さ。模試も近いんだし、質問は?
ないの?」


「…はい。
ないです。」


そう小さく短い答えをあたしに放った彼は
くるっと姿勢を180度回転させ
あたしの顔を見つめる


「…先生。
この一ヶ月間本当ありがとうございました。
俺。
先生とのこの時間すげー楽しかったよ。

だから。
…明後日の模試絶対頑張るから」


彼のその凛とした表情に
不覚にも涙腺が緩みそうになる



「…うん。どういたしまして。
でもあたしみたいなのが役に立てて、本当良かったな」




あたしのせいで
しんみりとした空気になるのは
絶対に嫌だった

だって彼には
悲しい顔より、明るい笑顔の方が

いつだって百倍似合っていたから


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