未来観測
「えりちゃん、久しぶりだねー。
あの時はお世話になりました」


あたしの視線を捕らえた彼は
夏休みの補習にいた生徒の一人だった


「…下崎君。久しぶり。
受験勉強は?
はかどってる?」


胸が痛くて
言葉が上手く続かない


「うん!
今日もこいつらと一緒に放課後勉強会」


そう言って笑った彼は
ぐるりと周りを見渡す

もちろんその中には“彼”の姿もあった


「補習を担当した教師としては、嬉しい発言だな〜」


一瞬言葉に詰まったあたしはすぐに平静を取り戻し、いつもの教師の顔に戻る


そっと横目で彼の姿を確認したけれど
彼が今思ってることなんて分かるはずもなくて

諦めたあたしは
下崎君との談笑を続けていた


.
< 60 / 231 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop