未来観測
彼は腕を掴んでいるあたしの手を
無理矢理振りほどこうなんてことはしなかった

そのことに少しだけ安心する自分がいる


「…はーい。
じゃぁ荷物まとめてきまーす」


そう間延びした声が聞こえた後
あたしはそっと彼の腕から手を離した




「えりちゃん、ごめんねー。
あいつ何か今日機嫌悪いみたいでさ。
いつもはあんな感じじゃないんだけど」


「え?ううん。
大丈夫。
下崎君が謝ることじゃないし。

…えーっと。
クラスと担任の先生だけ教えてくれる?」



彼はあたしと接点があることを
他の友達には伝えていないのだろうか

何となく知っていることに対して
知らないふりをしてしまっている自分がそこにはいた


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