未来観測
一通り下崎君から彼の情報を聞き
三年生の廊下の端で彼を待つ

すると右斜め前の教室から、仏頂面をした彼が姿を現した


「赤谷君!」


なるべく小さな声でそう呼びかけると
彼はしぶしぶという感じで身体の方向をこちらに向けた


「…体調。
大丈夫?」


保健室に向かう途中
あたしは二人の間に重なる無言が怖くて
恐る恐るそう尋ねた


「…うん。平気」


胸がキュッと鳴る


「さっき担任の先生には伝えといたから。
今から親御さんにお電話するけど、迎えに来てもらったりする?」


「…いや。
親仕事だし。
一人でいける」


事務的な会話が続く。


無言になるのがどうしても怖くて

何か言わなくちゃ。
話さなくちゃ。

そう思って頭をフル回転させるけど
こんな時に限って何も思い付かない頭に
今は心底嫌気がさす



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