未来観測
静かな廊下に響く二人の足音。

胸がドキドキして苦しい。


そんな時だった



「せんせー。
俺貸して欲しい参考書がある」


あまりに突然な彼の発言に一瞬意味が分からなくなる


「え?
さ…参考書?」


「うん。
この前英語教務室行ったら貸してほしいのあったんだけど、そん時先生が誰もいなかったから…」


彼はいたって普通に
あたしの方を向いてそう言った

これで会話がつながる。
そう安心したあたしは
すぐに彼の話しに賛成することを決めた


「あ!うん、分かった。
じゃぁあの教室寄ってこ」




ガラガラっとドアの軋む音がした後に
少しだけ埃っぽい匂いが鼻をつく


この部屋に来ると
二人で一ヶ月一緒に行った放課後の補習を鮮明に思い出した


「…えーっと。
あの参考書どこ置いたっけな?」



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