ブラック・コーヒー
兄はシックスス・フォーム(注:義務教育終了後、大学進学を目指すものが二年間通う)を卒業するとアメリカの大学に進学した。

両親も最初は国内の大学に進学することを望んだが、最後には兄の希望を叶えてあげた。


僕も大学だったら近くにいくつだってあるのに、何故わざわざアメリカまで行かなくてはならないのか理解できなかった。


「それはお前がまだ子供だからだよ」と兄は僕の疑問に答えた。

「おれは今この世界をリードしている国が一体どんな国なのかこの目で見て、この身体で感じて確かめたいんだ。

教科書やテレビからなんかは決して知ることのできない本当のあの国が知りたいんだ。

その経験がきっと将来のおれに役立つと信じている」
 

そのときは兄の言った言葉は理解できなかったが今なら分かる。

いくら教科書や何かから知識を詰め込もうが、そんなものは表面上の薄っぺらなものに過ぎない。

本当の知識というものは経験、体験からしか得ることのできないものなのだ。

そしてその知識がその人の能力になるのだ。

兄はそうやって自分を高めようとしていたのだ。

サッカーにおいて、たとえ頭で戦術や技術を理解していようが、実際に練習しなければ何の意味もないように。

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