ブラック・コーヒー
兄は毎月アメリカから何通かの手紙と、家族の誕生日にはバースデー・カードを送ってくれた。

それらにはいつも兄の近況写真が何枚か添えられていた。

しかしそんな写真はいつも僕を悲しくさせた。

そこには僕の知らない兄が写っていたからだ。

僕の知らないところで笑ったり怒ったりしていて、僕の知っている兄は次第に古ぼけ、僕からどんどん遠ざかっていくようだった。

マーク、おれはもうお前の知っているおれじゃないんだ。

おれはどんどん大人になっているんだ。

もうお前と一緒に遊んでいたことなどすっかり忘れてしまったよ。

まるで兄にそんなふうに言われているような気がした。

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