Morning moon
「桜は磨くと艶が出る。家に帰ったら少し磨いてみるといい。」

デイビスがアドバイスしてくれた。

「さっきリチャードさんも同じ事言ってたよ。毎日磨いて、愛情込めておけって。」

「そうね、杖って使っていると愛情が湧いてくるわ。」

アンも同調した。

奏美は、もう一度杖を鼻に寄せ、その香りを記憶した。
そして杖をしまいながら、二人に向かって

「今日はありがとう。じゃあ私はもう帰るね。」

「え?もう帰っちゃうの?」

アンが寂しそうに答える。

「うん、学校の宿題もあるし…。」

「そっか…。」

「後は、二人で楽しんでね、じゃあ。」

「あ、奏美!」

本当は、ちょっと居づらかった。
この世界に暮らす二人とクォーターの自分。
比較しちゃいけないのに、なんだろう…。
この入り込めない空気。


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