Morning moon
足元を梅雨寒の風が通り抜けた。
少しだけ奏美の心にも隙間風が吹いたような感じがした。

そこへ人の気配がした。

「どうしたの相葉さん?」

「せ・先輩!いつからここに?」

「今来たところだけど。」

「そ・そうですか…。」

「中津川が走っていったけど、何かまずかったかな?」

「いえ、そんなことは…。」

「そう。彼も早く気付けばいいのにね。相葉さんは落とせないって。」

今来たところと言う割には、ここで起きたことを把握しているような発言

でも、それを追及するよりも、目の前に好きな人がいるということの喜びが勝った。

「先輩…私、今伝えたんです。剣の気持ちには応えられないって。でも諦めないからって言われて…。」

「それで困ってるの?」

「ええ、困ってるっていうか…。」

「人の心は難しいね。魔法で操ることもできないし。」

「魔法?!」
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