Morning moon
唖然として口をあけている奏美を見て、先輩は笑った。

「冗談だよ。そんなことが出来たら便利だけど、世の中めちゃくちゃになる。」

「そ・そうですよ…ね…。」

「少し歩かないかい?」

「あ…でも私傘持ってきてないから。」

「大丈夫。」

先輩はそう言って、自分の傘を差しだした。

(そんな…まさか…相合傘!?)

「入っていいよ。」

動けない私の肩を先輩がそっと招き寄せた。

ぎこちなく歩く私に先輩が笑った。

「緊張しないで。もっと寄らないと濡れるよ。」

「はい…。」

この状態で緊張するなというのが無理だ。

この時ほどいつもウメコが言ってる「緊張感を持て」を恨んだことはない。
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