Morning moon
以前花を摘もうとして、王子様に咎められた場所に近い。

その事を思い出していると、背後に気配を感じた。

「動かないで。」

あの時と同じ王子の声。

「あの…。」

「振り返らないでくれるならそのまま続けてもいいよ。」

「はい…。王子様なんですよね?」

「そうだよ。」

「どうして姿を見ちゃいけないんですか?」

「色々理由があるんだ。いずれわかるよ。」

「今知りたいです。」

「それはダメだ。君は大切な人だから。」

「大切な人って…。」

「わかったら戻りなさい。ただし3つ数えてからだ。その間に僕は姿を消すから。」

奏美は素直に1.2.3と数えてから後ろを振り返ったけど、今日は後ろ姿すら見えなかった。
王子の言葉に従って、裂け目の綻びから人間界に戻る。
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