Morning moon
奏美はもう一度杖を取って、指先でその木肌を確かめてみた。

手に馴染む。すっと染み入る木のぬくもり。

「ちょっと振ってみてもいいですか?」

「ああ構わないよ。ただし店を破壊するのだけはやめてくれよ。あはは!」

リチャードが面白くもない冗談を言う。

奏美は簡単な浮遊呪文を唱えた。

黒檀の杖は、程よくしなり、奏美の魔法を発動する。

カウンターの椅子が、ほんのちょっとだけ浮いた。

そして杖を振ると、椅子が上下に動きだした。

「すごい…。」

桜の杖よりも、魔法のコントロールがしやすかった。
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