Morning moon
最近奏美は、悩み事があると森を散策し、暁方の月を眺めるようになっていた。

以前おばあちゃんから聞いたように、夜が明けるまえから森に行き、空が白ばむのを待った。

泉のほとりの切り株に腰掛け、木々の間から空を見上げる。

人間界とそう変わらない星空が、奏美を見下ろしていた。

そうやって時間をつぶしていると、東の空から徐々にグラデーションがかかって来て、暁方の月の輪郭がはっきりしてくる。

でも、何をお願いするでもなく、奏美は自分の心と向き合っていた。


―――私のやりたいこと、やるべきこと、私の本当に好きな人…―――


そんな奏美の後ろ姿をそっと見守る影。

微動だにせず、奏美に存在を気付かれないよう呼吸の気配すら消して、ただ見守るだけ。

そよ風に揺れる銀髪。

奏美が立ちあがる直前になると、すっとどこかへ消えて行く。
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