Morning moon
魔法で時間を増やしたい、何度そう願った事だろう。

でもそれは禁忌だった。

時を動かすのは、かなりのリスクを伴う。

止めるだけなら、また繋ぎとめればいい。

トータルの長さは変わらない。

でも増やしてしまっては、そこにポケットのようなものが存在してしまう。

それは、どの時間とも接続できない。

その時間に起こった事が、事実となるのか虚偽となるのか、とにかく全てに歪みが生じる。

一つの歪みが、また波及して別の歪みを作り出す。

このスパイラルが、破滅へと導くのは容易に推測できた。

それすら魔法で解決するならば、もうそれは秩序というものを失い、ただの欲望だけの混沌とした世界


高かった夏の空がだんだん低くなってきていた。

自分で決めた猶予の期限が近付いている。

台風の季節を越えた頃、奏美の中では、ドクターコースを諦め、これから6年間、大学のことに専念しようという思いが強くなっていた。
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