Morning moon
奏美はいつも座る切り株を探した。

切り株を見つけ、落ち着いて空を見上げると、もうグラデーションが終わるころで、暁方の月がかろうじて見える。

でもあっという間に、その姿が空の中へ消えてしまった。

「やっぱりどこかに入り口を作らないといけないかな…。」

その時前方の人の姿を発見した。

銀髪を揺らし、奏美に背を向けていた。

(王子?!)

声にならない声で、奏美は叫んでいた。

また行ってしまう…

行ってしまう前に聞きたいことが山ほどあった。

奏美は慌てて後ろ姿を追う。

「待って!」

今度は森に響き渡る声で叫んだ。
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