LUNA
独りに慣れて
3年が経った。
時刻は午前2時を
少し回ったところ。
そういえば今日は
私の誕生日だ。
私にとったら
生まれてしまった事を
後悔する日でしか
ないのだけれども。
寝付けない私は
夜風に当たりたくなって
ベランダへ出た。
しとしと、しとしと
静かに小雨が降る。
ふと、空を見上げた。
…満月、だ。
『──満月の雨の夜は
決して外に
出てはいけないよ』
胸の奥底で眠っていた
あの言霊が、
『ヤツが君を
拐いにやって来る』
ゆっくりと
侵食するかの如く
紡ぎ出した。
『そして君も』
満月の光が
私の目を刺激する。
眩しくて眩しくて、
思わず目を閉じて、
いつもの暗闇に…。
刹那、
『ヤツに惹かれる。』
目を開けた私の前には
この世のものとは
到底、思えないくらい
美しい男が佇んでいた。
男のその形の良い唇が
微かに動き、
甘く低い声で…言った。
「……LUNA。」