幾千の時を超えて
妙な気分だった。


私の今世の家族といえるのは彼女だけだったから、いきなり出てきた親戚というものに違和感を覚える。

でも彼らが見つけ出してくれてよかったのかもしれない。

見送るのが私だけというのも彼女に申し訳ないものだ。

娘という器をもっただけの私より、本当の家族の方が彼女もうれしいだろう。

この部屋にとどまっている彼女の魂もうれしいのか、わずかに瞬いたような気がする。

少しは親孝行というものもできただろうか。

彼女を死に追いやった私が孝行というのも妙な話だが……。



物思いにふけっていると、彼らが私の前に戻ってきていた。

「……沙耶ちゃん、少し休んだら? 後は伯母ちゃん達がやっておくから」

「……いえ、結構です。義務ですから」

「義務……?」

「子供が親を見送るのは当然でしょう?」



彼らはそれを聞いて、妙な顔をした。

……言い方が悪かったか。しかし、いまさら5歳児らしく振舞うのも面倒だった。

猫を被るのは慣れているが、近所の隣人達は素の私を知っているので今からそれらしく振舞うのも妙な話である。

近隣では天才児で名の通っていたりする私だ。

当然だが。

器は5年しか生きていなくても、私自体は彼らよりはるかに永い時を生きている。

そこらへんの子供と一緒にしてほしくはない。

だが、その物言いも彼らには奇妙に映ったらしい。

幼稚園にも通っていない子供がこんなにはっきり物を述べたら確かに奇妙だろう。


< 10 / 28 >

この作品をシェア

pagetop