幾千の時を超えて
昼過ぎにアパートを出て、2時間ほど。どうやら彼らの家は同じ都内にあったらしい。

わずかこれだけの距離で見つけられなかったのも、どうやら彼女が小細工して彼らの住まいの近くのポストへ投函していたからだそうだ。


最後の手紙だけはアパートの近くのポストだったらしいが。


それもそのはず、最期の方は、彼女にとって起き上がることさえずいぶんと労力のいることだったから。

一言言ってくれれば私が出しに行ったのに……。


だが、彼女は私を驚かせるつもりだったようだし、私の存在を祖父らに知られたくなかったからのようだ。

私の存在を知られれば、彼女がいても無理やり引き取られるか、逆に孤児院に預けられるかするだろうと言っていた。

どうやら彼女にとっても祖父はいい父親ではなかったらしい。

祖母に関しては父親に逆らえないおとなしい人だったということだ。

亮さんや吉乃さんに訊いても、今もそんな感じらしい。



――私とはそりが合いそうにない。

私は、ほんの小さな家庭で暴君として君臨することに自己満足しているような胆の小さい男も、

それに逆らえず、小さくなっている女も嫌いだ。

結局どちらも自分のことしか考えてないのだから……。


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