幾千の時を超えて
ふと、窓に意識を向けると、閑静な住宅街の中の緩やかな坂道を登っているところだった。

道の標識などをみると、どうやらここは有名な高級住宅街の中らしい。


なるほど、質の良いものを着ているだけあって、ただの会社員ではないようだ。

知る機会がなかったので詳しくないが、彼らの着ている服もどこぞのブランド物だと思われる。


たしか、彼女の実家はたいそう大きな企業を経営していると昔聞いたが、

その社長の娘を嫁に取ったのなら、亮さんもある程度の地位を与えられているのだろう。

ただ、彼はただのお飾りではなさそうで安心する。

わずか数日の付き合いでも、彼の指揮力や、カリスマ性には目を見張る所があったから。


吉乃さんも、私の異常さを気味悪がることもなく、自然に接してくるから驚きだ。

いつもなにかと私の心配をしてくれる。

たぶん、家庭では良き妻、良き母として家族を支えているのだろうことがうかがえる。



新しい両親が応用力のありそうな人間で助かった。

どんな人物でも当たり障りなくやっていく自信はあるが、常に猫を被り続けるのも疲れるものだから。


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