幾千の時を超えて
「さ、こっちに入って。ここが居間だよ。うちの息子たちを紹介しよう。
 あの子たちはもう帰っているかい?」

亮さんが右手の部屋へ促しながら、近くにいた家政婦に問いかけた。

「匠(たくみ)様と翔(かける)様はお部屋にお見えです。ただ、隼(はやと)様はまだお帰りになっていないようで……」

「まあ! あの子ったら。今日は大事な日だから寄り道しないで帰るように言っておいたのに!」

「まあまあ、遊びたい盛りだから仕方ない。先に2人を紹介しよう。
 あの子たちに居間に来るよう伝えてくれ」

「かしこまりました」

そう言って、家政婦は中央にある階段から2階へ上がっていく。



「さあ、疲れただろう? お茶にしよう」

そう言って、亮さんが部屋へ入るよう促した。


居間の方も趣味のいい内装だった。所々にアンティークの家具が置かれている。

そこにあった大きめのソファーに座るよう促されると、たちまち紅茶とお茶受けが運ばれてくる。

長方形のテーブルの短い辺に面して1人掛けソファーが2つ、長い辺に面して3人掛けのソファーが2つ置かれている。

亮さんは一人掛けのソファーに、その右手にあるソファーに吉乃さんと私が座る。

吉乃さんは励ますように私の手を軽く叩きながら、「さあ、遠慮せずに食べて」と声をかけてきた。


私はティーカップを手に取った。

ここはおとなしく言葉に甘えるべきところだ。

初めは従順にしておいた方がいいだろう。

どちらにしろ生活費、教育費の面で世話になるわけだし、遠慮したところで意味がない。


カップへと口を近付けるとたちまち濃厚な香りが鼻腔をくすぐる。

いい茶葉を使っている。さすがというかなんというか。


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