幾千の時を超えて
内心で渋面を浮かべつつ、ちらりとその子供を観察する。

すると何を思ったのか、その幼い右手で私の髪に触れてきた。


「うわー、サラサラだ~! おかあさんのおへやにあるおにんぎょうさんみたいだねー!!」

……さすが子供、話がよく飛ぶ。



無言で触らせていると、吉乃さんがその言葉に納得したように手をたたいた。

「ああ、ほんとね! うちにあるフランス人形ちゃんみたいだわ。
 私のおばあちゃんがフランス人だったからその隔世遺伝ね~」



確かに私の髪は栗色の肩下くらいのストレートだし、瞳の色は琥珀色だ。

母も吉乃さんもどちらかというと色素は薄いが日本人の色と瞳をしているので、確かに隔世遺伝に見えるのだろ。


――だが、実際は別に母の血を引いているからこの姿ではない。

  生まれた時点からだんだんとこの姿へ変化していっただけ。

  そう、以前の、前世の姿に―――


さらに言うと、遺伝子も変化しているから親子判定なんてものをされたら赤の他人という結果が出る。

それだけは注意せねばなるまい。




「……隼みたいだな」


今までむっつり黙って向かいのソファーで紅茶を飲んでいた匠がぽつりと言う。

隼――二男か? 


「ああ、そうね~。今はいないけど、うちの10歳の次男の隼も隔世遺伝なのよ。
 あの子の方が沙耶ちゃんよりずっと外国人みたいな顔立ちね」



――― 髪の毛が金髪で、
       目は青色なのよ ――――
 




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