幾千の時を超えて
「――ティス!!」


一番聞きなれた、だがめったに聞くことのない焦った声に無意識に振りかえる。

と同時に、視界いっぱいに深紅が広がった。

嗅覚が感じる錆びた鉄の臭い。

幾千の兵を率いて、揺らぐことのないはずのあれの身体が、私の目の前で崩れ落ちていった……。


「……ジェ…イ…ド…?」


あれの背後から生えた剣の刃がずるりと抜かれる。

その柄を握るのは、にやけた顔をした異界の者。

その男が貴方の身体をまるでゴミのようにけり上げる。


ごほっ


口から赤い液体を吐き出しながら、苦しげに声を出す貴方。




「……ティ、ス…。い、きろ……」


私のゆったりしたマントの裾を握って、無理やり作った笑みを浮かべながら。

そして、世界を、白い光が、埋め尽くした――――。



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