幾千の時を超えて
『お父さんに会わせてあげられなくてごめんね』


何度か、彼女から謝られたことがあるから……。

でも、私にしてみれば、妊娠させておいて探しもしない父親のことより彼女の方が心配だった。

彼女は、子供とは思えない異常な私を恐れることもなく、まるで友人のように接してくれた、この世界での唯一の理解者だった。

私を生んだせいで不治の病にかかったにも拘らず、それを恨むこともなく、いつも穏やかに笑っていた……。

なぜ私を生んだのか。

こうなることは彼女のおなかの中に私が生まれた時点で忠告しておいたのに――。

そう問いかけた私に、彼女はこう言ったのものだ。


『でも、私は貴女を生まなければならないと思ったのよ。今でも後悔してないわ。だって女神様の母親になれたんですもの!』


そう言って、まるで聖母のように微笑んだ。

私にしてみれば、彼女の方がよほど女神に向いていたと思う。

血に濡れすぎた私よりも、よほど、『聖女』の名にふさわしい――。



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