What's love?
返す言葉が見つからないあたしに、佳奈は小首をかしげると、何か思いついたような顔をして、いったんあたしの席を離れた。
「これ、昨日大和に頼まれたんだ。美咲に返しておいてって」
「それって……」
戻ってきた佳奈があたしに差し出したのは、昨日あたしが大和の家に忘れていった傘だった。
「なんであんたが持ってるのよっ」
佳奈の手から傘を奪い取る。
佳奈は一瞬驚いた顔をしたけれど、その後であたしを睨み付けた。
「わたしが持ってたらいけないの? あんたさ、何か勘違いしてない? 自分が大和の特別だとでも思ってんの?」
「何が言いたいのよ」
あたしも負けずと、佳奈を睨み返す。
すると佳奈は一変、また笑みを浮かべた。
「悪いけど、わたし今日も大和に呼ばれてるから。大和ねー、美咲がなかなかヤらせてくれないって嘆いてたよ。やっぱり男は……」
「もういいっ」
あたしの大声に、騒がしかった教室が静まる。
まわりに広がる、異様な空気を置き去りに、あたしは教室を飛び出した。