What's love?
すっかりテレビに夢中になり、ソファに隅に忘れられていた携帯が鳴ったのは、
午後、お母さんがパートに行った後だった。
携帯を開くと、そこにはもう掛かってはこないと思っていた名前があった。
「……もしもし」
深呼吸をしてから、通話ボタンを押す。
「あー、俺だけど。今平気?」
「大丈夫だけど。悟こそ平気なの? 今授業中でしょ?」
電話の相手は、悟だった。
「大丈夫、大丈夫。それより、返したいものがあるからさ。今から出て来れない?」
「えっ、だって悟、学校は?」
「美咲に言われたくねーよ」
電話の向こうで、悟が笑う。
「あたしは、ちゃんと欠席だし」
「ちゃんと欠席ってなんだよ。なあ、お前昨日から変だぞ。朝、急にいなくなって、その後早退したんだって? 何してんの」
そう言われて言葉に詰まるあたしに、悟は短く息を吐く音の後で、また話を始めた。
「まあいいや。とにかく、返したいものがあるからさ。コンビニの隣にある公園で待ってるから、来いよ」
あたしの返事を待たずに、悟は電話を切った。
パタンとゆっくり携帯を閉じると、あたしはテレビの電源を切った。