What's love?
今度は殴られた訳でもないのに、俺はそのまま壁に持たれて座り込んだ。
「悪かったよ。俺も好きだから、美咲のこと。他の女は、全部切ったよ」
「好きならな、泣かせてんじゃねーよ」
悟は、そう言って俺に背を向けた。
「わりい……」
俺は立ち上がると、悟とは逆の方向へ足を進めた。
重たい扉を開けると、そこには、まるで俺の気持ちを映し出したような空が広がっていた。
夏はもうすぐそこまで来ているはずなのに、そこにたどり着くにはまだ時間がかかりそうだ。
本当に俺は、何をやってるんだろう。
悟に殴られるまで、あんな声を出させるまで、まともに向き合えないなんて。
美咲にだって、あんなことをする前に、ちゃんと自分の気持ちを伝えるべきだったんだ。
「情けねえ……」
声に出して呟くと、本当に心底情けなくなって、涙が出た。
もう、俺に美咲を好きだと言う資格はないのかもしれない。
だけど、俺は美咲に会いたいよ……。
「美咲……」
「大和っ!」
情けない声で呟いたら、本当に美咲の声がして、
俺は驚いて顔を上げた。