私立!皇奏大学探偵サークル事件簿2―君の呼ぶ声―
神野のことは一度きっちり調べた。
はずだった。
なのに出てきたのは父親死亡、母親植物状態、兄1人、田舎町に住む祖父母に育てられた普通の、お人好しバカな学生。
それだけだった。
だが、神野 邦果の話ではそんな普通な学生じゃなくて、母親は死んだと言い、邦果とは血はつながっていない。さらに、母親は神野に手をかけようとすらした。
どうも腑に落ちない。
俺が神野の後ろ姿を見ながら考えていると、珍しく佐藤さんが話しかけてきた。
「ねぇ、伶。深青ちゃん、いったいどういう子?」
「どう、とは?」
「あの子、なにを聞いても『分からない』っていう。なのにたまに、哀しそうに笑うのよ。普通の大学生はあんな顔しないわ。」
「さぁ…神野に関しては俺もよく分かりません。最初は、とんでもないお人好しバカかて思ってたんですがね…」
ぴたりと、前を歩いていた神野が止まった。
俺たちを振り返って、ここだよとちょっとぼろいアパートを指差す。
本当に、彼女は一体なんなのか。
なにを思って生きているのか。
ただ、もう少し、お互いに少しずつ甘い、この関係を壊したくないと思っている俺がいることは分かっている。
それだけだ。