寄り道小道迷い道
騒がしい喧騒の中、少し離れた場所で絵を描いている青年が、一人。
男子にしては少し長めの黒髪の、痩身の青年。
風景画を描くことの多い彼にしては珍しく、今描いているのは…
「泰斗君が人物画描くなんて珍しいね」
そう言ってスケッチブックを覗き込む少女、兼井 紗耶香は鉛筆を走らせる泰斗の横に腰かけた。
その泰斗の視線の先を見て、問う。
「陽菜ちゃん描いてるの?」
「うん。素の彼女を描きたくなって」
許可おりてないけどね、と苦笑する。
有名な歌手、"ミア"として芸能活動を続ける宮下 陽菜(ミヤシタ ヒナ)。
知り合ったのは最近だが、泰斗はよく気にかけているようだった。
そう、
あまり人に執着を見せないこの風変わりな青年が自分から頻繁に声をかけている。
少しの沈黙の後、紗耶香が口を開く。
「泰斗は陽菜ちゃんのこと…」
続きを問うのが躊躇われる。
それを言ったところで悪い事があるわけではないが、泰斗の持つ独特の雰囲気は俗物から離れた印象を抱かせる為に、自然と口にしづらくなってしまうのだ。
男子にしては少し長めの黒髪の、痩身の青年。
風景画を描くことの多い彼にしては珍しく、今描いているのは…
「泰斗君が人物画描くなんて珍しいね」
そう言ってスケッチブックを覗き込む少女、兼井 紗耶香は鉛筆を走らせる泰斗の横に腰かけた。
その泰斗の視線の先を見て、問う。
「陽菜ちゃん描いてるの?」
「うん。素の彼女を描きたくなって」
許可おりてないけどね、と苦笑する。
有名な歌手、"ミア"として芸能活動を続ける宮下 陽菜(ミヤシタ ヒナ)。
知り合ったのは最近だが、泰斗はよく気にかけているようだった。
そう、
あまり人に執着を見せないこの風変わりな青年が自分から頻繁に声をかけている。
少しの沈黙の後、紗耶香が口を開く。
「泰斗は陽菜ちゃんのこと…」
続きを問うのが躊躇われる。
それを言ったところで悪い事があるわけではないが、泰斗の持つ独特の雰囲気は俗物から離れた印象を抱かせる為に、自然と口にしづらくなってしまうのだ。