寄り道小道迷い道
いつもの場所。

いつものメンバー。

相変わらずの騒々しさの中で黒血 邪鬼(コクチ ジャキ)は苦々しいため息をついた。
視線の先には人の間をせわしなく動き回る少女。


邪鬼の恋人、兼井 紗耶香(カネイ サヤカ)だ。


このような場所に来なければ一生会う事はなかっただろうと思わせる程に平凡な少女。
父親が大きな病院の院長でよく手伝いをしているのもあり、ここで怪我をしたり体調を崩す者達の世話を進んでよくする。


まさに"怪我人は皆平等"。普段は受動的な動きを主とする彼女が怪我人、病人を前にすると非常に冷静に動き出すのだ。

実際、邪鬼と紗耶香が近しい関係になったのも、邪鬼の"血を見ると気絶"する性格と、紗耶香の"患者は放っておけない"性格を燿羅(アキラ)と晃矢(コウヤ)がおもしろがって利用した賜物なのだった。


(感謝するべき…なんやろーか)


今だに燿羅がこの二人の関係をからかいのネタとして見守っていることを考えるとあまり感謝したくない思いがあるのは当然だろう。
そんな邪鬼の渋面の原因と言うが紗耶香その人なのだが、その事であれこれ言う気は、邪鬼にはなかった。

この雑談の場で紗耶香が面倒を見るメンバーには、当然同年代の男子もいるわけで、そういった者達にも優しい笑顔を向けて世話をする彼女の様子に、当然ながら心待ち穏やかではいられないのだ。
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