フッてくれて有り難う【季節短編】




休みなんだから遊びに行こ、と誘ってくれる友達に、ごめんね、と謝って私は靴箱を出た。


静かにゆっくりとしたペースで自転車置き場に向かう私。


靴箱を通り過ぎた時に、初めて話した時の事を思い出す。


『あ、あのさ、ここに置いといた俺の靴見なかった?』


『見てないよ』


『そっか、サンキュー』


何気ない、ほんと何でもないあの頃が、私の中で流れてて、靴箱の向こうにあの頃の私が見えた気がした。


思えば靴箱にあった靴、普通あるはずだよね。


だけどノリの良くて、誰とも仲の良いあなたは男子の中でも、そうやって靴の取り合いっこして、馬鹿やってたよね。


彼の周りにはたくさんの友達がいたから。


きっと、彼にとっては私もその中の一人になってるんだろうな。
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