深海から見える灯【完全版】
あたしはトイレにしゃがみ込んだ。



『お前の方がずっと心配だよ。だってさ、お前って生きる事自体が下手くそなんだよな。うららは周りが見てるよりずっと脆いからな。』


あたしやっぱり生きるの下手くそだよ。
ヒロが言うとおりなんだよ。


涙はやがて嗚咽になる。


人の事を蹴落としてまで自分がのし上がろうとか出来ない。

あたしはいい人ではない。

でも、弱いから人を不幸にした後の見返りが怖い。


水商売をして随分ずうずうしくはなったけど、自分のためだったから。
すべて「お金」という思いがあったから今日まで虚勢を張ってやってこれた。



「ヒロ・・・、あたしには無理だよ」

泣きながら呟いた。


人の不幸の上に幸せなんてありっこないもん。


あたし、ヒロとも約束を破ってアホな事しちゃった・・・。



ユカリには何の罪もないよね?

あの子もあたしもこの仕事が向いてないだけだよ。


あんな事しなくても、向いてないから辞めたら?って言えばよかった。

そしたら、あたしもユカリも傷つかなかったんじゃないかって思う。


ヒロ、どうして死んじゃったの?

こんなアホな事をしてるあたしを怒ってよ。



あたしはなかなかトイレから出る事が出来なかった。
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