深海から見える灯【完全版】
数ヶ月経った。

ユカリはあたしを見ようともしなかった。

(当たり前だよね)

あたしはこの仕事を辞めようと考えていた。

彼氏の借金ならほとんど完済したはずだし。

あたしには向いてないと思う。


それに・・・・


「最近、店の売り上げ落ちてるんですよね」

黒服とマリナさんが話している。


今はわからないけど、この当時、店の売り上げが急に落ちるのにはジンクスみたいなものがあった。


キャバ嬢の妊娠。


売り上げが落ちると大抵誰かが妊娠してるって事が多い。

「誰かデキたのかな?」

マリナさんも難しい顔をしている。



あたしはここ2ヶ月以上、生理がきていなかった。





社会人になっても実家に住んでいるあたしは、店には「体調悪いからしばらく休む」と言って、会社帰りに薬局に寄った。

妊娠検査薬を手に取る。


夜中、家族が寝静まった後でこっそり検査した。

(1分待つのか・・・)

説明書を見ながら検査キットを覗くと、1分のしないで「陽性」の反応。



あたしは絶望的な気分で検査キットを見ていた。

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