深海から見える灯【完全版】
「元気だった？」

あたしが電話するとサトはいつもののんびり口調。


「うん･･･、サトは？」

「元気だよ。みんな、うーちんと連絡取れないって心配してたよ」

「そう･･･」

あたしの声にサトは「どうしたの？」と不審そうだった。


「あのね･･･」

あたしは震える声を必死で抑えようとした。

「子供･･･、妊娠しちゃった」

「え？誰の？彼氏の子？」

驚いた声。

「そう･･･なんだけど、もう彼氏じゃないんだ」


あたしは電話番号も変えて、彼氏の前から姿を消していた。


「どうするの？」

「どうするって･･･堕ろすに決まってるじゃん」


明日、あたしは堕胎手術をする。

検査キットを見た瞬間、あたしを財布か何かと勘違いしてた彼氏を思い出して吐き気がした。

（汚い･･･）

そう思ったから。


「１人で行くの？」

サトの言葉に「もちろん」と言った。

「一緒に行こうか？」

「え？」

意外な言葉にあたしはビックリした。

「１人じゃ辛いだろ？オレついていってもいいよ」

あたしはサトの言葉に涙が出そうになったけど、

「大丈夫。本当に大丈夫だから」

と明るく言った。

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