深海から見える灯【完全版】
初めて行くそのバンドのライブは対バンだった。


先に他のバンドが演奏していて、あたしとユッコちゃんはそれを見ていた。

(・・・?)

何となく気になって後ろの客席の上、2階の多分、関係者席をあたしは振り返った。

客席は真っ暗でよーく目をこらさないと見えないけど、男の人がステージを見ている。

(あれって・・・)

Tシャツ姿のその人は、あたしが会いたいと思っている彼だった。

気のせいかもしれないけど、目が悪いあたしが裸眼でもその人だけはハッキリわかる。


何でだろう、彼を表現すると「青い人」あたしはそう思う。

何かオーラが見えるわけでもないし、青い服を着てるわけでもないけど、彼は青い人。


みんながステージを見てるから、1人で後ろを見てるのってあたししかいない。

あたしは手をブンブン振り回して合図を送った。

(あ・・・!!)

多分、絶対コッチ見た。

あたしの変な行動に周りの人もキョロキョロし始めたから知らないふりをして前を向いた。

「どうしたの?」

ユッコちゃんがあたしを見た。

「いた!いたの!!後ろに」

あたしはドキドキしていた。

もう一度振り返ると彼はもういなかった。


そのバンドのライブが始まって、あたし達は何故か手を繋いでいた。

ステージで歌う彼はやっぱり青かった。
キレイな色鉛筆みたいな青。


曲を聴いて、あたしもユッコちゃんも泣いた。



この人はあたしと同じ種類の人間。

そう思うのは絶対間違いじゃないんだけど、一つ違うのは、この人は絶対にウソはつかない。逃げない。

だからあたしはこの人に惹かれる。

あたしと同じなのに、あたしが欲しいモノを持っているから。
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