深海から見える灯【完全版】
異変に気づいたのは初雪が降って、もう冬になる頃。

(そろそろマフラー必要だな)

何て考えながら下駄箱から上靴を出そうとした時・・・

「あれ?」

上靴の紐が両方繋がったみたいに固く結ばれている。

(イタズラかなー)

部活の後輩にでもやられたかな?
でも、あたし後輩に厳しくした事ないっていうか、関心ないんだよね。
とにかくこれじゃ靴履けないからスリッパ借りるか。

あたしは職員室に寄ってスリッパを借りて、ペタペタ歩きながら教室に向かった。

ガラっ

教室のドアを開けた瞬間、空気が一気に嫌なものへと変わった。

何だかあたしが歩くとみんながあたしに注目している。

その原因は自分の机を見てすぐわかった。

机中に真っ赤なマジックで『死ね!!』と書いてあった。

「何これ?」

あたしは机を見てビックリした。

その時、廊下からすごい笑い声が聞こえた。
その声はあたしのグループの子達の声だった。

「え?どういう・・・・?」

振り返った時に机にぶつかって、中の物がバサバサと落ちた。

あたしの教科書、あたしのノート、全部、全部に赤マジックで『死ね』。

「あいつ、マジ死ねばいいのに」

大声で言ったのはグループの中心の子。

その言葉は紛れもなくあたしに向かって言った言葉だ。

(どうして・・・・?あたしが何をしたの?)

あたしは机の前に立ち尽くしていた。

今日は、ヒロも若葉も学校に来ていない。

ヤスくんもクラスの人間同様、遠巻きであたしを見ていた。

ただ、1人だけあたしに近づいてきた。

西だった。西は床に散らばったあたしの教科書などを拾ってくれた。

「・・・・ありがと」

あたしは言葉をゆっくり出した。そうじゃないと泣いてしまいそうだった。

「今日は保健室に行くか、帰った方がいい」

西はあたしに教科書を渡しながら言った。

「男に媚売ってるんねーよ」とまた声がした。


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