深海から見える灯【完全版】
しばらくして、秋になった。



あたしはドキドキしながら妊娠検査薬を見つめていた。



生理が1ヶ月以上遅れていた。


まさか、とは思ったけど確認のために相変わらず深夜に実家でこっそりと結果を見ていた。



昔と違って判定が出るまで結構時間がかかった。



目をこらしてよーく見てみると、うっすらだけど陽性の反応が出た。


薄いのが気になるけど、あたしは涙が出そうなくらい嬉しかった。



お腹の中に子供がいるかもしれない。




恋人に連絡しようか迷ったけど、薄い反応が気になる。


明日ちゃんと病院に行って確認してから報告しよう。



喜んでくれるかな?

お腹にいるのかな?



あたしはお腹に手を当てた。



21歳の時と違って、あたしはこの子が本当に存在しているならどんな事があっても産みたいし、愛情をいっぱい捧げたいと思った。



あの時、汚いと捨ててしまった命の分まで・・・



あたしの身体は相当弱っているけど、この子を守れるなら死んでもいい。
そう思った。



多分、あたしが初めて知った母性だと思う。



あたしは嬉しさと不安の中、次の日会社を休んで病院へ行った。
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