深海から見える灯【完全版】
絶望的な気分になった。


触診と尿検査をして、医者から言われた言葉は残酷なものだった。


「妊娠はしていますが、着床していません。月経も始まっているので、生理と一緒に赤ちゃんは流れます。最近多いのですが、超早期流産です」


「流れてしまうんですか?どうにか着床って事出来ないんですか?」

あたしは必死で聞いた。



「残念ですが、妊娠出来る身体なんですから次に期待しましょう」




罰だ・・・。



病院の帰り、あたしはそう思った。


21歳の頃、何のためらいもせずに堕胎したあの子からの罰なんだ。

あの時、思ったじゃん。

罪は償うからって・・・。

それがこれなんだね。これが罰なんだね・・・。



あたしは車に乗ると駐車場の中で号泣した。



あたしはいつになったら救われるんだろう・・・。


あたしの足元は真っ暗闇だ。


何も見えない。深海だよ、ここは。



恋人に報告をすると、「残念だったね」と簡単な返事がきた。
彼なりに考えて簡単な言葉を選んだんだと思う。



今、あたしが欲しいもの。


それは大事な人との子供。

あたしと彼の分身。

あたしが命をかけて守りたい命。


手が届きそうなところにあったのに、どうしていなくなってしまうの?


< 196 / 217 >

この作品をシェア

pagetop