深海から見える灯【完全版】
流産はあたしの精神をものすごい勢いで蝕んでいった。


恋人もあたしもその事には一切触れない。


あたしはただイライラとしていた。



たまたま出来た子供だ。

でも、妊娠は出来るんだからどうして協力してくれないの?

ずーっとそう思っていた。



ねぇ、ヒロ。


あたしは罪をちゃんと償ってないのかな?


あたし10年くらい耐えてきたよ。


堕胎した事、その時の感情を許せないって思っていたよ。


今でも、それを思い出すと吐き気がするの。


最低な自分に嫌気がさすの。


苦しい思い、いっぱいしたよ。


でも、まだ足りないのかな?


まだあたしは許されてない?




あたしは布団に入ると流れてしまった命と、自分から消してしまった命、

その両方を思って泣く日々が続いた。



あの時、思ったはずだ。

呪ってくれてもいい。罰は必ず受けるからって。


10年間耐えてきた事自体が罰だと思っていた。

でも、違うのかな?


今が罰なんだね。

大事な人がいて、新しい命を望んでる今、それが罰なんだ・・・

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