深海から見える灯【完全版】
その頃、母親が手術する事になった。


今まで病気知らずの母親が手術する・・・

それはあたしにとっても、家族にとってもショックな事だった。



手術の日。


あたしと父親は病院で、母の手術が終わるのを祈るように待っていた。


執刀医が出てきて「成功しましたよ」と言うと、あたしも父親も安堵を隠せないくらいにホっとした表情になった。


麻酔が効いていて、まだ寝ている母親を見て、成功を確認した。


「あたし、親戚の人とサクヤに連絡してくる」


父親にそう言って、あたしは病院の外に出た。


仕事で来れなかったサクヤにまず連絡をして、それから母親の兄妹、友達に一通り電話をした。



病院は全面禁煙だったから、外でしかタバコは吸えない。


あたしはしゃがんでタバコに火をつけるとため息をついた。



「あ、そうだ」


1件、連絡をしてないところがあった事を思い出して、タバコを消して携帯を手に取った。



そこで、あたしの記憶はプツリと切れた。


まるで、テレビの電源を切ったみたいに本当にプッツリと記憶が抜けた。
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