深海から見える灯【完全版】
ヒロの家に行き始めて、もう何回だろう?


あたしはコンビニ袋を下げながら歩いていた。


そもそも、何であたしがビールを届ける必要があるんだろう・・・。

考えてたら、ヒロの家の前に着いてしまった。


チャイムを押すと、いつも西がドアを開けるのにヒロが出てきた。

「あれ?西は?」

「今日はいねーよ」

あたしは居間にいるだろう、おばさんに「お邪魔します!」と声を掛けた。
「うらら、アンタ学校ちゃんと行きなさいよー」と返事がきた。


いつも通り、ヒロの部屋は楽譜が散らばってて、あたしが渡したビールをさっさと飲みながら楽譜とにらめっこしている。


考えてみると、あたしとヒロは初めて2人きりになった。
常に西がいたから、何か変な感じ。


「ライブ近いんだっけ?」

あたしもビールを一口飲んだ。


「おー、2ヶ月ないんだよなー」

ヒロの目線をずーっと楽譜。


「バンドって楽しい?」

そう聞くとヒロが笑顔で顔を上げた。


「めっちゃくちゃ楽しい!すっげー楽しい!あ、でも・・・」


「でも?」

しばらくヒロはタバコを吸ったりビールを飲んだり挙動不審な行動をしていた。

「でも何?」

「いや。これは悪口になるかもしれないからやめておく」

「いや、すっごい気になるんだけど」

「うーん・・・、いや、順調なんだ。曲の進みも早いし。カバーだから楽だし。バンドとしてはいいんだよ。だけど、その中の人間関係がどうよって事」

「は?意味わかんない。人間関係って、誰か仲悪い人同士とかいるの?」

「だから!バンドは順調なんだよ。音もちゃんと揃ってるし。だけど、問題があって、それが人間関係に影響がすげーんだよ」

もう一缶に手を出して考えた。

(音は順調?人間関係に影響してる?)
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