深海から見える灯【完全版】
「へー、そうだったんだ」


あたしとヨシコは近くの公園のブランコに座っていた。


ヨシコは制服、あたしは私服。
同じ中学生なのに変な感じ。


「で、うららは学校にくるのかな?」

ヨシコがイタズラっぽく笑う。


「まぁ・・・、あんなにちゃんと考えてくれてる人の気持ちをムダにはしたくないじゃん。だから、行こうかなって・・・」

あたしはボソボソ喋った。
何だか恥ずかしいから。


「そうだね。貴重だと思うよ、その気持ちは大事にしてあげないとさ」

「うん・・・」


ヨシコはブランコを足で揺らしながらタバコを吸っていた。

ヨシコってあんまり人と群れない。友達はたくさんいて、信用されてるのに何でか1人でいる事が多い。

(子供の頃から変わってたけどさ)


「あのさー」

あたしも足でブランコを揺すりながら言った。
ヨシコは顔だけこっちに向けた。

「何でヒロって、自分よりも人の事ばっかりなのかなー?まぁ、自分勝手なオレ様な時もあるんだけど、いっつも人の事ばっかりなんだよね」

「ヒロとケンカする?」

「するよ!めっちゃくちゃする。ムカつくんだよねー、でもすぐ仲直りする」

笑いながら言った。


ヒロとあたしはよくケンカをする。子供みたいなケンカ。
結局、あたしが悔し泣きをするから「悪かったって」とヒロが謝って終了。


「ヒロはさ、優しいんだよ。誰に対してもってワケじゃなくて、自分が信頼する人、大事だと思う人は全力で助けたいって感じじゃない?」


そうかな・・・?確かにヒロは友達がいっぱいいるけど、「大事な」とつける人に対してはすごいと思う。
絶対悪く言わない。悪いと思ったらちゃんとその人、本人に言う。


「うららも優しいよ。ヒロに似てる」

ヨシコは笑顔で言ってるけど、ヨシコも優しいとあたしは思う。
ヨシコこそヒロに似てるかな?と思うけど。
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