深海から見える灯【完全版】
もうすぐ冬。
あたしは冬が大嫌いだ。イジメられた時を思い出す。

あたしは夏休み明けからコンビニでバイトを始めた。
「先輩」との形上の付き合いは続いていて、毎月カレンダーをめくっては、あともう少し。と心に言い聞かせてた。

(バイトまで結構時間あるなー)

と考えながら歩いているとヒロに会った。

「お、ボランティア女。頑張ってるか?」

ヒロの挨拶にムっとした顔をして、ヒロの後ろにいる人に頭を下げた。
最近ヒロがよくつるんでいる「花くん」。

「こんちわ」

花くんも笑顔で頭を下げた。

「何してんだ?ボランティア女」

「バイトまで時間あるなーって考えてただけ。その呼び方やめてくんない?」

ヒロは笑いながらあたしの頭をポンポン叩いた。

バイトまで、ケンタッキーで花くんと3人で時間を潰す事になった。

「しっかし、お前ってバカだよなー。まだ付き合っての?」

ヒロは呆れて言った。

「付き合ってあげてるの!卒業まで。後3ヶ月くらい我慢すればいいもん」

烏龍茶を飲みながら返す。

「でもさ」

花くんがチキンを食べながら言った。

「その人、先輩?こんなに嫌われててよく付き合うよな。プライドねーのかな」

確かに。周りの人はただヨリを戻したと思ってるみたいだけど、「先輩」はあたしが嫌がってるのを知っている。「絶対オレの事好きになるから」とか寝ぼけた事を言ってるけど、その兆候は全くない。あるはずがない。

「そんだけ好きなんじゃねーの?うららの事。プライド捨てるくらい」

ヒロの言葉にあたしと花くんは顔を見合わせた。

「何だよ」

「ヒロが・・・、あんたが何かメルヘンな事言ってるから・・・、どうした?」

「どうもしねーよ。そんなに好きってどんな感じかな、って思っただけ」

あたし達はまた顔を見合わせた。

「ヒロ、気持ち悪い!好きな人でも出来た?」

「はぁ?好きな人?オレは遊んでたいの。いらねーの。好きな人は」

「あ、そう」あたしはつまらなくなった。

「オレ、すっごい好きな女いた事ある」

花くんの発言にあたしとヒロは「ウソ!?」とガッツいた。
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