深海から見える灯【完全版】
「うららが普通の女子高生って感じでよかったよ」

ワタルの屈託のない笑顔があたしは嬉しかった。

「いやー、何かおごるよ。おでん?肉まん?」

あたしがレジの方に向かおうとすると「ちょっと頼みあるんだ」と言った。

「頼み?」

あたしの制服を指差した。

「実はさ、うららに声掛けたのもその制服だったからなんだ。」

「制服?うちの学校に何かあるの?」

「オレの従妹がうららの高校に来年入るんだよ。生意気な女でさ、よかったら面倒みてくんない?」

(ワタルの従妹?)

「面倒って・・・、何すればいいかわかんないけど。別にいいよ」

「良かったー。今度連れてくるわ」

そんなにホっとして何か変わった子なのかな?



年が明けて、ワタルは従妹「チイ」を連れてきた。

(小猿・・・)

第一印象はまさにそれ。可愛い顔してるんだけど生意気そう。

「ねー、うらら。あたし敬語とか苦手だからタメ口でもいい?」

第一声はそんな感じ。

これは誰かが面倒みないと一発で呼び出しくらいそうな感じだ。

「別にいいけど、あたし以外にはちゃんと敬語使ってよ?」

「気が向いたらねー」

ワタルは苦笑いしている。
あたしもつい苦笑いになってしまった。



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