深海から見える灯【完全版】
何か変だなと思ったのは、お正月も終わってもうすぐ2月になる頃。

ここ最近、いつも忙しいお父さんが結構早めに帰ってきてる。
それで夜中までお母さんと何か話し合ってるみたい。

気づいてまもなく「うらら、ちょっと」とお母さんが部屋をノックした。

居間にはお父さんもいて、大きな街に予備校通いで出て行った兄のサクヤまで帰ってきてる。

「大事な話しがあるんだけど」

お母さんはあたしに座るようにうながした。

「え?何?まさか離婚とか?」

あたしの言葉に「アホ」とサクヤが言った。

「お父さん、転勤になったの」

お母さんが説明をした。転勤先はサクヤが住んでいる街。

「え?そうなの?単身赴任するの?」

あたしの答えに首を振る。

「じゃあ、どうするの?」

「家族みんなで行くことにした」

お父さんが言った。

家族みんな?それって・・・

「あたしも?」

「もう、あんたの担任の先生には言ってあって、新しい学校探してくれてる」

担任!?新しい学校!?

「編入試験受けなきゃいけないんだけど・・・」

お母さんの説明に「ちょっと待った!」とストップをかけた。

「ちょっと・・・、いきなり何言ってるの?編入って、あたし転校するの?やめてよ。ヤダよ、あたし絶対ヤダからね!」

あたしの言葉にお母さんは「でも、家族揃って行った方がいいから」と言った。

「それってさ、あたしの気持ち一切無視だよね?あたし絶対行かない」

あたしは部屋に戻ってコートを掴んだ。

「勝手だよね。人の気持ちなんだと思ってるの?ふざけんな!!」

叫んで出て行くあたし「試験は来月の初めだからな」とお父さんの声がした。

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